読み終えた本「流れとかたち」
2013-12-14


禺画像]
エイドリアン・ベジャン著 紀伊國屋書店(2013)

熱力学の知識が皆無の私が読むには難解な本だったけど,「自然の中に潜むデザインはどのようにして決まるのか?」を知りたかったので,これに答える新しい考え(コンストラクタル法則)のようです。

特にまとめという訳ではなく,単なる気になった箇所のメモ:

p168 スポーツにおける進化
速度は質量の1/6乗に比例し,あるいは身長の1/2乗に比例して増加する。学会誌に北京オリンピックに間に合うように投稿したが,掲載されたのはその一年後。ボルトとフェルプスの勝利を説明した,とされたが,「予測した」のだ。

生き物は有効エネルギーの単位消費量当りの移動可能距離を増やすように進化するはずだ。

p193 ソローからの引用
「私は森に行った。なぜならじっくり物事を考えて暮らし,人生の本質的な事実だけに直面し,それが教えてくれるものを学ぶように努め,いよいよ死を迎えるときになって,自分が充実した人生を送ってこなかったことに気付くようなはめになりたくなかったからだ。」
ウォールデン:森の生活 ヘンリー・ディヴィッド・ソロー

p195 皮肉にも,コンストラクタル法則は,科学の正統的学説に疑問を呈しつつ,非科学者が抱く世界に対する印象の正しさを立証する科学的な原理だ。※冒頭でノーベル化学賞受賞者のプリゴジンの説を真っ向から否定していた。

p198 流動系としての樹木
樹木は水を運ぶためのデザインだ。

p199 樹木が「発生する」のは,そこに水があり(上方へ)流れなければならないからであって,「木が水を好む」からではない。

p243 コンストラクタル法則を明確に表現すれば「有限大の流動系が時の流れの中で存続する(生きる)ためには,その系の配置は,中を通過する流れを良くするように進化しなければならない。

p249 科学的な考えが根付くまでは長い時間がかかるように見えるのは,河川よりもはるかに複雑な流動系だからだ。
「新しい科学の真理が勝利を収めるには,反発する人々が納得し,その真理を理解するからではなく,彼らが最終的には死に絶え,その真理に慣れ親しんだ新しい世代が育つからだ。」マックス・プランク

p352 文化交流という言葉は政治的に校正ではあるが,戯言だ。古代ローマ人は自らが欠いているもの(奴隷と内的治安)を獲得するために広がり,同時に蛮族も自らが欠いているもの(食物,住みか,文化)を獲得するために,ローマ人に襲いかかった。

p353 古代には,流れは地表を歩き回る個人が背(や頭の中に)に担っていた。歩き回る個人が多いと,侵入された文化はその影響で激変した。侵入してくる集団が侵入された集団より多くの文化を持っていたときは,解放と進歩につながった。侵入してくる集団の方が文化が乏しいと,暗黒時代やソヴィエトの共産主義がもたらされた。その両方が,私の知っているヨーロッパで起こった。(※筆者は1948年ルーマニアの生れ)

p383 私たちは,人間と機械の一体化した種になった。

p398 未来について
文明は,その構成体のいっさい(科学,宗教,言語,表記など)ともども,質量とエネルギーの知識と移動から,アイデアを思い付く人々の世界的な移住に至るまで,進化を続ける流動の配置という果てしない物理法則なのだ。
優れたアイデアは移動し,伝わり続ける。流れやすい配置は既存の配置に取ってかわる。それが生命だ。それが私たちの歴史だ。そして,それこそが未来なのだ。

※巻末の木村繁男(金沢大学教授)による解説では,(氏は著者の弟子)
コンストラクタル法則を一言でいえば,「熱力学第二法則では満たすことができない,ベジャンの自然認識の願望を可能にした」原理である。
のだそうです。


続きを読む

[本]

コメント(全0件)
コメントをする


記事を書く
powered by ASAHIネット